昨年、『マーケティング・リテラシー』と言う本を出しましたが、「その内、マーケティングの精度を向上させるために、プライバシーを売り買いするようになる」と言うようなことを書きました。その延長線上の冗談で「ブログを書かないと、管理者から叱られるようになる」みたいなエピソードを書いたわけですが、今ではmixiで日記を書かないでいると、
最近は更新がありません
日記でマイミクシィに近況報告!
と注意されちゃうわけです。
こういうメッセージが出せるのは、メモリーの節約なんてことを考えなくて済む時代になったからなんです(テキストデータの容量なんてたかが知れてますし)が、グーグルのストリートビューが登場したのには驚きました。技術的には別に新しいことではありませんでしたが、現実に撮影の車を走らせ、かつ、サーバーに残しておくことが、コストとして一企業が受け入れ可能なんだということにはたまげました。
(ストリートビューが、どういう収益モデルにつながっていくのか、そして、それは採算が取れるのかについては、まだ良く分かりませんが)
プライバシーのからみで、人の顔とか車のナンバーはぼかしを入れて公開しているストリートビューですが、元データはそのまま残しているそうです(高木浩光@自宅の日記)。画像の保存コストが下がっているので、そうなんだろうなあと思ってはいたのですが。
画像の保存コストが下がっているから、一昔前だったら考えられないような細密な記録が残せるよなあ、良くも悪くもと思っていたところ、
1.ゴミ袋を開けて、内容物の写真を撮影している
2.個人情報が特定できる書類などを、内容が読める状態の画像で記録している
と言う話を見つけました。
松浦晋也のL/Dで私は気がつきましたが、元々は『クロノス・クラウン』が最初のようです。
これは、想像しなかったわけじゃないんですよ。
ゴミの分別の徹底という今回の話ではなく、マーケティングのネタとして。
だって、家庭名とリンクして、ゴミの詳細がデータ化できるってことは、リアルな消費の記録が取れると言うことじゃないですか。
一昔前の市場調査や消費動向調査はもちろん、ライフログ(こんな言葉は、一年前に出版したときには、まだなかったですよ。あっという間に、当たり前の単語になりましたが)とPOSをリンクさせた最先端の行動ターゲッティングであっても、分かるプロセスは購買までであって、どう使われたかはトレースできてません。
ところが、ゴミを記録し、分析すれば、消化の状況まで分かるわけです。
横浜市にその発想はまだないと思いますが、ゴミ収集はマーケティングのデータ収集の機会として、使えるってことです。
困ったことに、推進するメリットがあって、ゴミ収集という、実は誰もやりたがらない(ヨーロッパだと、仕事になかなかありつけない移民の仕事だったりします。日本では、いろんな噂は聞きますが、少なくとも、大学生の就職希望ランキングの上位に出てくることは、全くないわけで)、なんの付加価値も生まない単純作業が、高付加価値業務に化ける。平たく言うと、儲かっちゃうわけなんです。
「シックスシグマに基づく分析により、NVA(Non-Value Added:非付加価値業務)でしかなかったゴミ収集を、VA(Value Added:付加価値業務)にシフトさせ、ゴミ収集をコストがかかるばかりの公共的負荷ではなく、儲かるビジネスに変えることができる」とか四象限チャートを使って提案するコンサルタントとかマーケッターがいそうだな。
bogusnewsのネタみたいだけど、今、コンサルも広告代理店も仕事ないから、本当にやりそうで嫌だな(安永航一郎調で)。
ゴミの写真を分析する画像解析ソフトとか、ゴミについてるバーコードを読み込んで集めたデータを分析するITシステムは、技術的にはできるし、そのデータを(こっそり)買いたがるクライアントはいるからなあ。全国の自治体は赤字であっぷあっぷなので、赤字部門が収益を産むとなれば導入しちゃうよねえ。ゴミの分別の徹底にもつながるって大義名分もあるし。
プライバシーを盾に抵抗しようにも、「ITの進化した現代においてプライバシーなど存在しない」とか「家の外側に出されたものにプライバシーなんてないんだ」と言うのが、ストリートビューをめぐってのネット世論だったし、ストビューで顔やナンバープレートにぼかしを入れたみたいに、個人を特定しない「担保」さえかませば、導入を押しとどめるロジックはないんだよなあ。
技術の進歩は止められないし、止めようとも思わないけど、どっかで人の幸福と調和というか妥協させる必要があるんじゃないかな。儲かるしくみ(=マーケティング)を追求していただけなのに、いつのまにか『1984』的な超管理社会ができあがっちゃっていたということにならないためにも。
社会の変化はすっごく早いんで、すでにネタとして古くなったものもありますが、プライバシーとマーケティングという部分では、拙著はまだ古くないって言うか、良いとこ突いていると手前味噌だけど思ってます。
ぜひ、お手にとって見てください。
最近のコメント